2005/05/11
OAA池村
最近の惑星全般に関するアマチュア天文家の観測状況(安達、伊賀、堀川、池村)
後半 木星 土星 天王星 海王星 冥王星 太陽系外惑星 かけがえのない地球
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●木星
見た目にも明るく、大きく見えて、模様も良く見え、撮影しやすいので、アマチュアとして取り組みやすく、全惑星の観測枚数の6割以上が木星です。
1975年に南半球の赤道よりにある太い縞模様が一度全部真っ白になり、その後突如 1 が現れて模様があっという間に南赤道縞が元の
濃度に復元していくという、激変の様子(南赤道縞攪乱)が観察されました。
この 1 を目撃することはたいへん稀なことで、安達 さんは、1975年に起った1を目撃しスケッチを残しています。
木星ファンにとってはホールインワンのようなものです。これを最大の楽しみにしている人が多いです。
この現象は3年から15年程の間隔で不定期に起りますが、前回起ったのは1993年で、この現象がすでに12年間も空白になっています。
そろそろ起るのではないか、その前兆が始まらないか、目が離せません。
東海地震はずっと空白であってほしいですが、木星はぜひとも起こってほしい現象です。また、せっかくなら合の頃ではなく衝の頃に起ってほしい
と願っております。
これとは別に、数年に1度程度起る現象としては、木星の赤道をはさんで2本の太い縞があります。南半球側のものを南赤道縞といいますが、
ここのベルト内で中規模の異変が見られることがあります。白い大きな模様が現れて、それがどんどんと左方向に広がり、大きな南赤道縞全体
が普段の半分くらいの濃度になってしまったりします。現在は南赤道縞、北赤道縞とも同じくらいの幅、濃度になっています。
mid-SEB outbreak(SEB内突発白斑) 1998年のmid-SEB outbreakの典型的な画像
1998年のmid-SEB outbreakの展開図データ:浅田秀人、305mm Newtonean
北赤道縞は目立つ異変は起りませんが、濃さや太さが変化し、半分ほどになることがあります。
2001-02年から2004-05年のNEBの変化
大赤班について、19世紀頃は、現在の1.5倍ほどの大きさがあったようです。それ以降徐々に小さくなってきていますが、近年では1989年が最
も大きくそれ以降、小さくなるスピードが早くなっています(堀川さん)土星木星課。 大赤斑は、地球の南半球の高気圧と回転方向が同じで、
高気圧性の巨大渦だということがわかっていますが、大きさ、色、形とも今後、どのように推移していくのか、長期的な目で比較、監視して
いきたいと思っています。 地球の高気圧とまったく同じものというわけではありません。
T=09:50:30
U=09:55:40.6
1997年頃までは3個あった永続白斑が1998年と2000年3月に相次いで合体し、現在は1つにまとまって「BA」と呼ばれているものが見えています。
大赤斑の半分ほどの大きさで、大赤斑のすぐ南側をちょろちょろと左へ移動し、2年ほどで大赤斑を追い越していきます。
893ミリミクロン付近のメタンバンドで撮影すると、この永続白斑は大赤斑とともに明るくに浮き上がって写るので、それではっきりと判別できます。
もう、合体する相手がありませんし、この白斑がどのようにして消えていくのか、このような白斑が再びできるのか、893ミリミクロン付近の
メタンバンドの撮影もあわせて、行く末を見守っているところです。
2005年からの傾向として、600〜800nm付近の近赤外光で白黒撮影する方が増えてきました。これは、????? の観測のためには有効だからです。
Paolo R. Lazzarotti : Massa-City,Italy
ニューヨークの後10時間後に日本で観測 木星がちょうど一回転して同じところが見えている。
つむじ風 大赤斑点のまわり反時計回りにぐるっと
[Christopher Go : Cebu Philippines] 2005/05/31
ガニメデ[Carmelo Zannelli , Sicily-Italy]235mm SC 2005/05/28
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●土星
webカメラで撮影されるようになって撮影能力が向上し、アマチュアでも中緯度付近に小規模な白斑が撮影されるようになりました。
1ヶ月に1件程度このようなものが写ったとのメールが飛び交い、追跡されています。 2002年以前はアマチュアにはとても手が出なかったものでした。
柚木健吉さん
また、アマチュアでも 衛星エンケラズス、ミマスの(存在)撮影が手軽に行われるようになりました。
土星の南極付近が赤くなる現象が注目されました。 1999年8月頃と2005年2月頃に起りました。
カラー撮影するとこのように赤いことがすぐにわかります。眼視では口径30cm以上で見えるようです。
この赤さの度合いを数値にして、ピークはいつであったか得るための客観的方法が見つからないので、2005年はピークの時期の分析はまだ
行われていません。
ギリシャ コロボス 南極付近が赤い
南極に小さな白いリング状のベルト 暗班と 大きな楕円が回っている。
今年1月13日に衝を迎え、本体に比べてリングが以上に明るくなったのが観察されました。衝効果、満月現象といわれるもので、リングが砂状の粒子で
できていることを示すものです。
柚木健吉さん
今年1月14日は探査機カッシニ、ホイヘンス が土星の観測、衛星タイタンの地表の様子を撮影し発表されたのは記憶に新しいことですね。
フランスのアマチュアで、タイタンの表面模様の撮影に成功した例があります。
また、光度観測によりタイタンの自転の様子や、北極付近に発生している白い雲の活動らしき光度変化を
捉える試み(35cmシュミカセ)に成功したというアマチュアが現れました。大望遠鏡や、探査機では、タイタンだけに絞った常時継続的な
観測は無理ですが、アマチュアでもできる観測範囲がひろがってきていることを示しています。
日本はシーイングが悪いので、かなり条件が悪いです。
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●天王星
webカメラによりアマチュアでも表面模様や、衛星4個(14等級)を撮影する人が出てきました。
ミランダ17 アリエル13 ウンブリエル 14 チタニア 13 オベロン 13
天王星の表面模様の撮影はこれまでボイジャーが初めて撮影に成功しましたが、このときは南極付近でした。
ボイジャの画像 1986/01/17
230mm SC アメリカ カルロス 2004/07/13 スケッチ
250mmNewton オランダバンディバ 2004/09/15 ノーフィルター 大気による色ずれの影響があるのかないのか?
1994年 HST画像
現在も南極が見えています。2007年11月26日から、天王星の北極点は38年ぶりに太陽光が当たるようになります。
以後は天王星の北極点が見えてきます。
何か変化をが捉えることができるか。アマチュアにより今から表面模様の継続的な観察撮影、記録がされること
が望まれます。
このほか2007年問題と言われていることがあります。 さてなんでしょうか。
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●海王星
1979年ボイジャーが初めて表面模様を撮影しました。
八ップル望遠鏡やハワイの大望遠鏡等で模様が捉えられていますが、アマチュアでは表面模様はほとんど捉えられていません。
2004年は眼視スケッチが2点ありました。
眼視観測画像
1979年のボイジャーによる撮影で木星の大赤斑によく似た大小の暗班が撮影されましたが、その後の八ップル望遠鏡の撮影で、
この暗班がなくなっていることが確認されました。
衛星はトリトンがかわべ天文公園で2003年撮影されました。
視直径は2秒角程度で、暗く、観測、撮影しにくいので、あまりアマチュアによる観測が行われていません。
もしかして、今年の穴場かもしれませんが...
2003/09/28伊賀祐一
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●冥王星
冥王星は視直径0.1"で14等級 衛星は17等級と、アマチュアの手に負えるものではありませんでした。
これまでは。
30年ほど前には冥王星の色は表面は極低温でみな凍っており、太陽光線をそのまま反射して黄色っぽい
といわれていましたが、2004年6月にフランスのクリストフが、RGB3色分解撮影して色を確認したところ
青緑色ではないか、との観測報告がありました。
2004/06/15フランス クリストフ氏の画像
私達もこの観測画像を元に、調査した結果この画像では青緑色と考えられるとの結論に達しました。
14等級と撮影の限界に近い明るさで、最近の衝は6月20日ころで観測好機は日本では梅雨にあたっています。
全国の観測者に呼びかけましたが、色を確認するための撮影の機会が無かったようでした。
今年は4月5月に色の確認の観測の試みが各地で行われたはずですが、どうだったのでしょう。
私は5月7日に撮影してみました。
以前なら2日間にわたり撮影して、現像して比較して、これだ。と見つけるのですが、現在では
1時間以上時間を置けば3.5秒角移動するので、撮影後直ちに画像を比較し、見つけることが出来ました。
黄砂の影響もあり、あまり信頼度が良くないですが、少し緑っぽい白だろうと思われました。
2005/05/07 池村
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西はりまの口径2mのなゆた でも眼視観測され観測として記録されました。
日時:2005年5月11日午前2時 天候:快晴
倍率:312倍 観察者名:時政典孝、内藤博之
観察の様子:DSS画像と比較し同定。
なゆた望遠鏡で眼視してみました。
冥王星を眼視したのは初めての事でしたので、感激でした。
天候は良かったのですが、やはり暗く色を判別するのは難しいと思いました。
何となく白よりは青みがかっているかなと感じました。
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青みがかって、あるいは青緑色 ということは、表面にメタンなどの大気が現れている可能性があります。
大望遠鏡でもスペクトル観測されることを望みます。
私たち日本のアマチュアとしてももっと多く観測され、もっと確かな結論にしたいですね。
冥王星にはシャロンという衛星が1個あり、見かけの離隔1"程度とのことですが、これもまた、
日本ではありませんが、35cmシュミカセで衛星の位置が変わって写っている様子を捉えた方がいました。
好シーイングを逃さず、私たちもぜひ捉えたいと思います。 だれが一番乗りになるのか...。
1990年10月HST
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●その他 太陽系外惑星について。
日本ではありませんがやはり35cmシュミカセで、太陽系外惑星によると思われる変光の観測を始めている人がいます。
日本国内でのこのような活動はまだないようです。
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地球の尊さ 愛地球博に関連して、
●地球以外の惑星
私たちは、これらの惑星の観測、撮影を趣味として活動しています。見かけは美しいですが、どの惑星も、人類が移住できるような
極楽浄土はどこにも無く、どれも地獄のような惑星ばかりです。
タイタンはご存知のとおり、−180゜の極低温、酸素なし 約2気圧。
木星土星の本体は混沌としたメタン、アンモニアの液体、気体が強風で渦巻き、一旦落ち込むと高圧超低温の液体の奥深く沈み込み、
冷凍となって流れに乗り暗黒の流れの奥深くに...冷凍凍結保存されるのでしょうか。マンモスのように残ればまだしも。
たぶん、ばらばらになり、中心部の金属水素に同化してとけて...ただの汚染物質になる?? どうなるのでしょうね。
(火星にはエリシウムと呼ばれる所があります)
最も楽そうな火星でも 地表気圧は10Hp程度 主成分は二酸化炭素で蛍光灯の中のような超低圧で、酸素すらありません。
最高気温20゜最低気温-100 水なし たぶん無菌でしょうけれど、こんなところに住んでみたいですか。
惑星たちはどれも、このような地獄の環境であることを知れば知るほど、私たち地球のかけがえのなさを強く感じます。
唯一、その極楽の惑星だけは、私たちの天体望遠鏡で見ることが出来ないのが残念です。
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●私たちは
惑星表面の観測を趣味として活動しております。詳細な様子を捉える、分析し結論を得ることには意義はあるでしょう。
私たちアマチュアは趣味として生きがいの一部として楽しみ、向上し、満足感、生きがいを感じることも大切だと思っています。
各個人の観測機器の大きさ、環境、生活の都合などさまざまある中、同好者の仲間がみな同じように平等に競い合い楽しめることを大切にして
いきたいと思っています。
機材の大小を問わない→画質を問わない
観測であることを重視。
報告件数、量、速さを競う。
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